レポート

2024-02-29 近況

能登半島地震の発生から2ヶ月が過ぎました

昨年8月にオープンした珠洲ホースパークが迎える初めての正月。元日の朝も馬たちは、放牧地へ放たれるといつもどおりに悠々自適の時間を過ごし、15時に各々の馬房へ戻った後は、これまたいつもどおりにカイバをペロリと平らげて、まったりとしていました。いつもと何ら変わりない、時がゆったりと流れる珠洲ホースパークらしい一年の始まりでしたが、様相が一変。16時6分に発生した震度5強の地震に続き、その4分後には震度6強の地震が当地を襲いました。特に2回目の地震は、立っていることができない猛烈な揺れに、聞いたことがないほどの強烈な地響き。それでも厩舎に大きな損傷はなく人馬ともに無事で、馬たちを厩舎前の角馬場へ速やかに避難させることで安全を確保することができました。余震による被害を未然に防ぐため、その後数日は角馬場での昼夜放牧を選択し、天候の悪化が懸念されたタイミングで日中放牧に戻しました。カウディーリョはストレスからセン痛を発症したものの、獣医さんやスタッフさんにケアいただいたことで快方に向かい、数日で無事回復しました。

一方、角居さんは隣町の輪島市で被災しました。地域住民たちの支援を行ったうえで1月3日に珠洲へ向かったものの、酷い渋滞が発生していたことで辿り着くことができず、その日は輪島へ引き返すことに。ホースパーク入りできたのは道路が復旧した1月8日のことでしたが、普段の3倍以上もの時間がかかる険しい道程でした。久々に馬たちと対面した角居さんは「どの馬も普段と変わりない感じでした。コンディションが良くて、怯えている様子もない。馬同士の関係性もそのままで『本当に地震があったのか?』と思えるほどでした」と当時の印象を語ります。

1月8日以降は放牧にプラスして、角居さんが跨ったうえで角馬場やロンギ場での乗り運動を行い、日によっては外乗り(珠洲市内を散歩)や芝が生えている近隣の遊休地で速めに動かしてきました。「平時よりもストレスのかかりやすい環境を考慮し、コンディションの維持をメインとした運動を行っています。間近で震災関連のヘリコプターが頻繁に発着するのですが、最初はその音にびっくりした様子だったものの、徐々に順応してくれたことで今ではまったく動じなくなりました。ただ、珠洲ホースパークの敷地内や周辺の生活道路は、地震でアスファルトがひび割れたり、波打っているところが未だに多く見られます。余震やそれに伴う津波が発生した際は、そのような環境の中を避難する必要が生じます。いざというときにスムーズに避難させるには、現在の環境に慣れさせることがとても大切で、運動も兼ねて外乗りを行うようにしています」と角居さんはトレーニングの趣旨を話します。

カウディーリョについても「カウくんは競走馬という意識がだいぶ薄れてきた、いわばガス抜きができてきた感じで、馬乗りの再調教に入れる状態になってきましたね。群れの中での立ち位置も徐々に変わってきていて、そう遠くなくアルくんに取って代わってリーダーになりそうな感じです。これまでの振る舞いから、みんなを守る、みんなを支えるリーダーになってくれるんじゃないかと思っています。力をふりかざすようなボスではなく、そう、必要なときに必要な行動する、頼れるタイプのリーダーにね」とその変化を伝えます。

最後に角居さんから皆さんに向けたメッセージです。「地元の住民だけでなく、外から来てくれたたくさんの支援者やボランティアさんたちが、能登の復興に向けて動いてくれています。ホースパークだけでなく珠洲市全体が被災し、その被害は甚大でしたが、カウくんと【がんばろう!珠洲】のラグをつけて牧場の外に出掛けると、復旧に向けて汗をかいてくれる人たちが笑顔を見せて、嬉しそうに挨拶をしてくれるんですよ。たとえ、今の苦しく厳しい、笑顔を作りづらい状況であってもね。馬はそんな希望のような力を持っているのだと改めて気づかされました。受け入れ態勢が整い次第、キャロット卒業生のグルーヴィットもこちらに来る予定です。もう少し先になるとは思いますが、能登が復興した際は、みなさんも能登に、そして珠洲ホースパークにぜひ遊びに来てください。カウくんをはじめとする馬一同、そしてスタッフ一同、心からお待ちしています」。


角居さん~、はやくごはんちょーだい~

放牧地でごはんをもぐもぐ

ひび割れた地面を慎重に慎重に

たくさんの方々の力が物事を前へと進めます

これからも珠洲を明るくするため、希望を胸に歩み続けます!

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