レポート

2025-02-14 近況

いい群れづくりが進んでいます

今季最強寒波の影響で、奥能登も瞬間風速的に積雪量が多くなったものの、それを除けば冬らしい冷え込みこそあれ、昨冬に続き、今年も雪が少ない傾向にあります。放牧地の木々の葉っぱが落ち、日当たりが良くなった分、天気が良い日は穏やかな日光が馬たちを包み込む、心地よい陽気が続いています。

そんな陽気に、時にはうたた寝する馬たちを見ながら、角居さんは「これまでは粗飼料中心でしたが、ここ最近は燕麦を少量ずつ与えるなど、意図的にカイバの配合をちょっと変えているんです」と話します。
「季節柄、地面に生える青草は少なくなっているので供給量を増やすべく、乾燥した牧草を多めに放牧地に入れるようにしています。それと同時に、ここ最近は冬場のエネルギー不足を補う意味もあって、今まで使用を控えていた燕麦を少しずつ与えるようにしているんです。草などの粗飼料と比較するとカロリーが高いことで、馬たちのカラダがふっくらとするだけでなく、エネルギーが体内に充填されることで馬の反応や反射が鋭くなっており、気性面においては攻撃性が幾分上がっているように感じます。現役競走馬のカラダに少しでも近づけると心身ともに変化が現れたことからも、改めて飼料がもたらす効果は実に大きく、ハードなトレーニングを必要としない珠洲で暮らす馬でも、ケースによってはいい影響をもたらしてくれるということを確認できました」
「馬たちがエネルギッシュになったことで、馬と馬の関係性に変化が起こったのではないか・・・と心配に思われる方もいらっしゃるかと思います。事実、我々もそうでした。しかし、そんな心配をよそに、群れのヒエラルキーがさらに安定してきたことには驚かされましたね。気持ちが出てきた分、小競り合いを起こすかなと思いきやそうでもなく、群れの中での序列、そしてそれぞれの順番や役割を理解しているように感じます。もちろん、群れの中で過ごす時間に慣れてきたことも大きいとは思いますが、自分たちのことは自分たちで対処していますって感じで、その結果、仲間と良好な関係を築くことができ、さらにはいい群れづくりができるようになってきたんでしょう」

当地で暮らす馬たちにありったけの愛情を注ぐ角居さん。その一頭一頭について、ここ最近の様子を伝えます。
「グルーヴィットはひとりポツンと過ごす時間が長くて、少し心配していましたが、ようやく群れの中での生活に馴染んできた感じです。コンディションが安定してきたことが一番大きいと思いますが、群れを統率するカウディーリョ&セリちゃんに挑むシーンも見られるようになりました。これまでは群れに馴染めない、だから一頭で過ごさざるを得ないのかな、と思うこともありましたが、ここ最近の振る舞いを見ると、こちらに来た当初はやはり体調が整っていなかったんですね。実は強いハートの持ち主で、これまでも見せていた一匹狼的な孤高のスタイルは、実は彼本来の姿であり、プラスして身体が楽になったことで彼らしいところが前面に出てきたように感じます。背腰の痛みが取れてきたので乗り運動を行う機会を増やしており、上手に使えていなかった背中については、背中を身体の下にしっかり送り込むストレッチを取り入れています。ひとたび良いフォームで動き出すとしっかりとした、良血馬らしいバネが見えてくるんです。やっぱり素晴らしい馬ですね」

「カウディーリョは群れの良きリーダーであり優等生。あらゆる観点から見ても、いい意味で変わりありませんね。他の馬に悪さをすることもなく、セリちゃんと一緒に群れ全体を上手くまとめてくれています。集牧の際もアル君とカテドラルが“早くおうちに帰りたいよ~”とバタバタ暴れていても、“慌てなくていいよ、自分は待っているからお先にどうぞ~”と譲る余裕すらあります。燕麦を食べていることである程度カラダがふっくらしてきましたが、精神面はとても安定しており、気性の乱れもなく、とてもよい状態をキープすることができています」

「次にオラオラ系のベレヌスですね。はい、皆さんのご期待とは裏腹に、心身ともに安定しています(笑)。歩様も良く、今では乗馬初心者でも楽に乗れるくらいの変わりようです。こちらに入厩した当初は暴れん坊の印象が強かったですが、環境にも仲間にも慣れたことで、自分自身の役割と生き方を見つけてきているように感じます。ただ、蹄に関しては自然界に対応できるところまで変わっていないんですよね。後肢を深く踏み込む歩様が影響しているのか、狭窄気味なところがあります。なので、ケアを毎日欠かさず行うことはもちろん、装蹄師さんには工夫した削蹄を行ってもらっています。自然に適応する過程において、このような傾向はよく見られるものなので心配は要りませんが、当面は上手く管理していきたいと思います」

「カテドラル、相変わらず馬が好きですね(笑)。こちらに来た当初は、人が跨ってから暫くの時間、左へ左へと曲がっていく感じがありました。それを修正するため、後肢の踏み込みを深く入れる運動を取り入れたところ、左右のバランスが整ってきました。それからはカラダをまるめて、大きく伸ばすといった、カラダを上手く収縮させる理想に近い形で動けるようになり、比例するように状態自体も上向いてきました。相変わらず気性面は落ち着いており、僚馬たちと争うこともなく、仲良く過ごすことができています。ようやく“競馬”というものを忘れつつあるようで、こちらでの生活にもよりフィットしてきた感じです」

今後を見据えて、角居さんは馬たちにトレーニングを施します。
「現役時代はあまり多用しないトレーニングですが、馬の有酸素運動と人間とのコミュニケーションを強くするため、“調馬索”を行う機会を少しずつ増やしています。調馬索はここホースパークでの基本調教と考えており、今後も乗り運動と併行して行っていきたく思っています。緊急時に対応できるようにするだけでなく、近隣住民と触れ合う時間を設けられるよう、ホースパークを飛び出しての外乗りや近くにある鉢ヶ崎海岸へ出かける機会を増やしています。最初は打ち寄せる波に躊躇する馬もいましたが、今ではどの馬も上手に海水浴ができるようになりました。牧場外に出る時のパートナーも定まってきた感じで、コンビやグループでそれぞれの役割、立ち位置が決まってきましたね」

最後に角居さんから皆さんにメッセージです。
「昨年は元日に発生した能登半島地震だけでなく、9月には能登半島豪雨に見舞われました。珠洲市内では倒壊家屋の解体・撤去が進んでいるものの、生活インフラの復旧にはまだまだ時間がかかりそうです。珠洲ホースパークもアスファルトのひび割れや放牧地の陥没、柵の破損、堆肥舎の倒壊など、手をつけたくてもつけられない箇所が多々残っているように、まだまだ復興半ばにあります。そのような中、クラウドファンディングやご寄付など、皆さまにはたくさんの応援とご支援をいただきました。スタッフを代表して感謝とお礼を申し上げたく思います。ありがとうございました。我々としましては、復興へ向けた復旧作業のスピードを上げていきたく思っているものの、様々な制約があることでなかなか難しく、理想と現実の乖離に日々もどかしさを感じていますが、地域も行政も発災以降、手一杯の状況が未だに続いており、誰かのせいにはできない現状が存在します。それでも立ち止まっているわけにはいかず、今年を復興元年と位置付け、復興を馬たちとともに進めていきたく考えています。皆さまには復興の過程をご覧いただき、その中で一歩でも前に進む、良い変化を楽しみと捉えたうえで、珠洲ホースパークで暮らす馬たちに会いにきていただければと思います。ちょうど能登空港と羽田空港を結ぶ航空便も地震前と同じく1日2往復に戻ったことで、珠洲ホースパークをはじめとする奥能登にアクセスしやすくなりました。スタッフ一同、お馬さん一同、皆さんのお越しを首を長くしてお待ちしています!」

グルーヴィット やっぱり太陽ってあったかいな(^^)

カウディーリョ うん、今日も群れの秩序は保たれているな(`・ω・´)ゞ

ベレヌス 角居さん指導のもと調馬索にチャレンジ!

カテドラル 仲間と一緒に楽しい外乗り♪

明けない夜はない・・・一歩ずつ着実に前へと進みます!

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